日本人の「自然との共生」という概念が消失?

昨今、水害が頻発しているのは温暖化の影響だと思いがちですが、違うのでしょうか?

 それもあるでしょうが、もっと根本的な問題があります。我々が住んでいる平野はもともと氾濫によって造られたところです。そのことを無視して都市開発し、住民が被害に遭っている。ちょっと前まではハザードマップすら公表されていなかった。

日本人の「自然との共生」という概念が消滅しました

自然を畏れ逆らわず、共生するのではなく、自然克服、開発優先できたツケですか。日本人が元来持っていた自然観は「自然との共生」でした。しかし明治以降、近代的な科学技術思想が導入されると、自然を人間に対立する存在として捉え、自然をコントロールし、災害は可能な限り撲滅し、恵みは徹底的に収奪していくようになった。自然と共生していく民衆の自然観は明治以降の150年間でほぼ消滅しました。それが昨今の災害を激化させている要因ではないでしょうか。昔は日本人は自然を壊してまで生きていくことは「うしろめたい」ことだという自然観を持っていました。家を建てる時には水害に遭わないかをチェックし、いざとなったら逃げることを考え、舟を用意していた。今はダムさえ造れば、川の氾濫はコントロールできると過信しているのではないですか

 ――自然災害は土木で克服できると思っているのでしょうか。